池袋界隈で当時付き合っていた彼女(現在の妻)と、泊まれる場所を探していた。遅くまで遊んでしまい帰るに帰れなくなった。そこで泊まれる場所を探そうとしたが、今度はホテルがほぼ満室でなかなか空室があるホテルが見つからない。時間は経過していくし場所は見つからない。最悪なケースも考えなくてはならなかった。カラオケボックスで時間をつぶすとかであるが、それは避けたいと思った挙句、見つけたのが旅館のようなホテルだった。
少し薄暗い入口と、旅館の佇まいが妙な雰囲気を出していた。少し怖かったけど、あと数時間もすれば日が昇り明るくなる。それまでの我慢だと思い入室した。本当の旅館のように案内人が部屋まで案内してくれた。部屋は畳部屋にベッドが置いてあるというごく普通のホテルと変わらなかった。そしてシャワーを浴びようと思ったが、いくらひねってもお湯が出ないのだ。仕方なしにカウンターに連絡すると、ボイラーが壊れていてお湯は出ないと言われた。
せっかく汚れを落として寝ようかと思っていたのに、その風呂でさえ楽しみを奪われてしまう結果になってしまった。当然、朝まで寝ようとしたがなぜか落ち着いて寝れない状況が続いてしまった。今でも忘れないあの畳の感触、ベッドの感触は忘れられない。今でもその旅館はひっそりと佇んでいる。見た目は老舗旅館という雰囲気で良いが、もう少し明るめにしても良いのではないだろうかと思わされる照明は未だに健在なのだろうか。再度その場所を訪れてみたいと考えている。
旅館というと幼少期はあまり良い思い出はなかった。父が酒乱だっため、酒を飲んで暴れると母が幼い自分と弟の手を引いて、いつもの旅館に避難するのであった。でもなぜかその旅館に来ることを楽しみに待っていた部分もあったのかもしれない。今自分がどういう状況でこの旅館にいるなどということを知ることはなかっただろう。今でも思い出す旅館の感じはこうだ。部屋の奥には小さな冷蔵庫。その中にはキンキンに冷えたビールとレンジジュースが並んでいる。そして冷蔵庫の上に置いてあるお盆にはコップと栓抜きが用意されていた。
畳の部屋で親子三人川の字になって眠る。家には帰れないけどそれはそれで楽しかった。というか楽しもうとしていたのだろう。父が酒を飲んで暴れているということはいくら幼稚園児であったとしても理解できないわけではない。そんな中で旅館に行くといえば逃げ隠れるしかないのだから。そして次の日、隙を狙って自宅に戻り必要なものを取りに行く。そしてまた旅館に戻り睡眠をとるといったことを何日も繰り返していた。この時の記憶もすでに風化してしまい微かに覚えている程度しか残っていない。
だから自分は旅館に行くとこの時の記憶が呼び出されてしまう。本当なら嫌いになるはずの記憶が蘇ってくるが、毎回少しずつ風化されていっているのかもしれないが、あいまいな部分が増えてきていることも事実だ。そして月日が流れてしまいその旅館はもうなくなってしまっていた。幼少期の誰も経験できない旅館どまり。今思うとどんな心境だったのだろうかと母の心を察するが、当時は子供心にはしゃがないといけないという使命感があったかもしれない。そう母を困らさせないようにするためである。
皆さんは旅行等を計画されるときは何を重要視するでしょうか。もちろん観光地が魅力的なことは大事ですよね。移動手段や現地の料理、郷土品なども旅の醍醐味の重要なポイントです。では、宿泊施設はいかがでしょうか。旅の重要なポイントは人それぞれで、宿泊にこだわりはない方もたくさんいらっしゃるかと思いますが、私が旅行でかなりこだわるのは宿泊施設かもしれません。逆に言えば、宿泊したい旅館があるから旅行に行く。と言っても過言ではありません。
そこで私はいつもホテルやペンション等といった洋風な宿泊施設よりも旅館を選んでしまいます。理由はいくつかあるのですが、やっぱり温泉が好きなことが一番の理由でしょうか。また、ホテルは部屋数が多くサービスも広く浅いイメージがするのですが、旅館はもっとアットホームでサービスも個人個人で違ったおもてなしをしてくれる印象があります。サービスの内容もホテルは平均的に同じような内容なのに対して、旅館のサービスはその土地や各旅館によって本当に様々で毎回感心させられることが多いです。
また、料理の面でもホテルより旅館の方が好きです。ホテルの料理はどうしてもバイキングになってしまうかと思いますが、旅館の料理はとても豪華でその土地の名産物をおいしい料理方法でだしてくれます。バイキングだと普段食べている料理もあったりして、料理に対しての思い出も薄くなりがちですが、旅館の料理は一つ一つのメニューがこっていて盛り付けもきれいなので、どうしても思いで深くなります。宿泊費の面で言えば、ホテルの方が一般的に安めなのかもしれませんが私はやっぱり旅館を選んでしまいます。